メイキング · FLATFRONT
隠れることが、ゲームそのもの。
最初のアイデアから、テーブルの上の15の夜まで2日。壁に背中を押しつける男、午後のうちにつくり直された犬、そして1943年の本物の冬が、どうやってFLATFRONTになったのか。
10月20日の朝、FLATBOYの最新作はまだ存在していませんでした。2日後、それはテーブルの上にありました。占領下のノルウェーでの15の夜、雪の中のひとりの男、懐中電灯を持った見張り、足跡を追ってくる犬。Bjørn Ivarに、彼が手放さなかったこだわりについて聞きました。答えは、ゲームをつくっている最中に彼が実際に口にした言葉です。その多くはノルウェー語で、ここでは日本語に訳しています。
FLATFRONTはどこから始まったのですか?
新しいゲームをつくりたい。でも今回はアイソメトリックで……忍び込むゲーム。世界は広くて、ミッションとマップがあって、忍び足で進み、這って、隠れて、走る。第二次世界大戦のゲームで、舞台はノルウェー。
1人用なんだ。
そう書いたとき、彼の頭にはある古いゲームがありました。でも数分後には取り下げています。「あれにインスパイアされたなんてことはない。全然違う。こっそり忍び込むことについての、ただの思い出だったんだ」。思い出は残りました。お手本は残りませんでした。
なぜテーブルの上の模型のように見えるのですか?
ジオラマの勝ち。
それが答えのすべてで、それで十分でした。同じ捕虜収容所が、6通りに描かれました。リアルタイム3D、モダン、プリレンダー、モバイル、ピクセルアート、そしてジオラマ。勝ったのはジオラマで、決め手はこのひと言だけ。だからFLATFRONTのどの場所も、上から撮影した本物のミニチュアのようにつくられています。バルサ材の兵舎にかかった重曹のような雪、トラックや船や列車の本物のモデル、そしてRavnのいる帯にはピントを合わせ、画面の上と下はやわらかくするレンズ。模型の上でマクロレンズがそうするように。


何よりも大事なのは、隠れることのようですね。
壁でも木でも、何か突き出ているものに向かって押したら、背中をぴったりつけて身を寄せる。隠れていたいときに自然とそうするようにね。
本当にぴったりくっついていないといけない。それが自然なんだ。それに這っているなら、縦向きにぴったり寄り添って伏せないといけない。……隠れることは、このゲームの大事な一部なんだ。
隠れることは、このゲームの大事な一部なんだ。Bjørn Ivar、最初の朝に
だからRavnは、壁の近くで止まるのではなく、背中を壁につけます。這っているときは、壁に沿って伏せます。見張りの視界は、正面にくっきりした円錐が一つ、目の端にもっと広くて短いものが一つ。板壁はそれをさえぎりますが、鉄条網はさえぎりません。見張りには、あなたの動き方が立てる音の届く範囲で聞こえます。走れば大きな音、這えばほとんど無音です。
動き方には厳しかったですね。
動きを、切り替わりを、ちゃんとコントロールしないといけない。自然じゃないとだめだ。跳ねたり、あちこち勝手に向きを変えたりしちゃいけない。ある状態から次の状態まで、全部が自然な動きじゃないと。
どうしてボタンがすぐに切り替わらないの?忍び足の指示が伝わったのかどうか、わかりようがない。すぐに反応しないで、立ち上がるのを待ったりしてるから。
今はボタンひとつでWALK、SNEAK、CRAWLを切り替えられ、押した瞬間に反応します。同じ朝、逆の方向に変わったものもあります。雪の上で動かすリングは、最初は私たちの別のゲームと同じように、物に吸い付くようになっていました。1時間もしないうちに、彼は見切りをつけました。「今はすごく難しい。物に吸い付くのはやめて。うまくいってない」。今のリングは、何にも飛びつきません。狙ったところに、そのまま置けます。
建物の後ろにいる男を、見た目を損なわずにどう見せるのでしょう?
彼が壁の後ろにいるとき、それか敵が何かの後ろにいるときは、建物越しに見える赤い人影みたいに表示しないといけない。スタイルを壊さないように、ちょっと透けた感じで。Ravnは青で、敵は赤とかね。
でも、建物の前にいるときは出さない。後ろにいるときだけ。
では、一歩を踏み出す前には?
このゲームの大事なところは、何かをする前に、スティックでスクロールしてマップ全体を見て回れることなんだ。
50パーセント多く見えるようにしたいかな、と考えてる。そうすればキャラクターが少し小さくなる。そのぶん、何が起きているかがもっと見える。
FLATFRONTの夜は、こうして始まります。まずは見ること。スティックを大きく倒すと視点がついてきて、鉄条網や監視塔、巡回する見張りの上を越えていきます。それから動き出します。
15の夜には本物の歴史が詰まっています。どうやって入ってきたのですか?
最後に何かを爆破するのはどうかな。工場とか?……遠くから狙撃するシーンがあってもいいかもしれない。急にライフルスコープ越しに物が見える、みたいな。
歴史や映画、ほかのゲームからヒントを得て、わくわくするストーリーを考えて。……そういうシナリオが少なくとも12から15は欲しい。
彼が求めた工場はMørkfossになりました。峡谷の上の岩棚に建つ重水工場です。その夜は本物の夜をもとにしています。1943年2月27日から28日にかけてのVemork。破壊工作員たちは峡谷を下り、川を渡り、向こう側をよじ登って、一発も撃たずにやり遂げました。ゲームでは、その夜は一枚のカードで終わります。そこに書かれているのはNOT A SHOT FIRED。最後の夜は、最後の重水を積んだ湖のフェリー。1944年2月20日にTinnsjøで沈められたHydro号がもとになっています。Ravnは故郷のRjukanへ帰ります。
マップのほかの場所も、同じ冬です。捕虜収容所は架空ですが、Griniをもとに描いています。Bergenの港で難民を乗せた漁船は、シェトランド・バス。リンゲ中隊の男たちはイギリスから降り立ち、製材所にあるSigridの抵抗組織はMilorgです。司令官が捕虜を閉じ込めている屋敷は、占領軍の本部だったOsloのVictoria Terrasseを表しています。フィヨルドで魚雷防御網の奥にいる戦艦はAltafjordenのもので、姉妹艦の本物のモデルをもとに、旗をすべて塗りつぶしてつくられています。列車はDombåsで給水します。物語に余地が必要なところでは名前を変えましたが、冬はそのままです。そして、ライフルスコープという彼のアイデアには、まるごと一つの夜が与えられました。
ステルスは静かです。スリルはどこにあるのでしょう?
ちゃんとクリアできないといけないし、ステルスゲームでも、少しは爽快感がないとだめなんだ。
シーンにもっといろいろなものを。もっとかっこいい体験を。木から鳥が何羽か飛び立つとか。
鳥たちもいます。ただの飾りではありません。木の近くで音を立てると、群れが梢から一斉に飛び立ち、それもまた音になります。近くの見張りが様子を見に来るのです。ときどき遠くでフクロウが鳴きます。見張りにもう少しで見つかりそうになると、画面の縁が赤く暗くなり、鼓動が速くなります。見張りを倒すと、一瞬時間がゆっくりになり、雪が舞い上がります。見張りたちはそれぞれの夜を過ごしています。眠る者、焚き火のそばに座る者、たばこを吸う者がいて、物音で目を覚まします。巡回兵は持ち場の端で向きを変え、犬はあなたの新しい足跡に鼻を寄せてたどり、そのあとを犬係の兵士がついてきます。
最初はうまくいかなかったことは?
犬が完全に壊れてる。
犬の脚が、犬そのものより速く動いているみたいだ。
前脚の下のほうが逆向きに曲がっているみたいだ。
ある日の午後だけで3通のメッセージ。犬は本物のシェパードをもとに一からつくり直され、足取りも地面と合うようになりました。屋敷には地下室のミッションがありましたが、それも彼が遊んでみるまででした。「完全にばかげてる。頭が床を突き抜けたまま歩いてるんだから。何の意味があるの?」。家は地面に1.22メートル沈められ、捕虜は奥の部屋に移されました。ボートのそばの司令官は関節が逆向きについていたことがわかり、つくり直されました。窓で揺らめくランプも試しましたが、取り外しました。光をつるすものがなく、宙に浮かぶ点になってしまったからです。そして、見張りの懐中電灯がRavnを照らした瞬間にゲームがカクついたときには、見張りが道を見つける仕組みを、カクつかなくなるまでつくり直しました。
そして、冬の夜の音は?
忍び足のときの音楽はFrost Watch。低くうなる弦、低いタムでやわらかく刻む鼓動、ときおり鳴る冷たい鐘と、反対側から返ってくるそのこだま。ハイハットもスネアもなく、上に明るい音も乗せないので、風と足音の下に収まります。警報の曲はSearchlightsで、緊張感はあっても英雄的ではありません。鉄条網を抜けて外に出ると、夜の呼び声は下がらずに上がっていき、長く伸ばした長和音に着地します。足音は動き方によって変わります。歩けば雪を踏むザクッという音、忍び足なら慎重な一歩、這えば雪にこすれる布の音。どれも本物の録音です。サウンドライブラリーに唯一なかったのは、どの戦争映画にも出てくるあの言葉でした。だから見張りは「Hey!」と叫びます。
FLATFRONTは今、テーブルの上にあります。15の夜。ひとりのプレイヤーと、向かいに座って身を乗り出し、こうささやく人のために。「這え。今だ」